Googleアナリティクスのバージョンアップ

Googleアナリティクスでできること

ウェブサイトのアクセス解析において、グローバルスタンダードとなっているGoogleアナリティクスですが、そもそもの機能と、その利点はなんでしょうか? まず最初に、大きく4点にまとめてご紹介します。

リアルタイムの利用状況がわかる

アクセス解析の黎明期には、アクセスカウンターのように単純に(主にトップページへの)累積アクセス数を、表示したり、把握できたりするだけ、というものでした。しかし、2000年代に登場したGoogleアナリティクスでは、数秒ごとのアクセス数を積算して、ほぼリアルタイムのアクセス数を、必要とするサイト内の任意のページについて把握する事ができます。

これを更に積算すれば、当然のことながら1時間あたり、一日あたり、各週あたり、客月あたりといった多様な時間軸でアクセスを可視化し、グラフなどの形で活用することが可能です。ユーザーのサイト内の動きを時間やページで知ることができるため、ユーザーのニーズや興味関心について仮説を立て、より正確なペルソナを作ることができます。

ユーザーの基本属性がわかる

現在のウェブブラウザの世界ではGoogleのChromeがトップシェアとなっています。このGoogleサービスへのログイン情報はもとより、Cookie(以下クッキー)という仕組み(※)を用いることでも、ある程度のユーザーのサイト利用履歴を知ることが可能です。それにより、年齢、性別、趣味嗜好、所得層、や既婚、未婚といった基本属性を類推して、アクセス状況を解析することができるのです。

ただし、EU圏の個人情報保護の方針(GDPR:EU一般データ保護規則)として2018年以降、クッキーも個人情報とみなして、ウェブサイトはまずユーザーにクッキーの利用の可否を問い、利用の承諾を得ることが求められるようになりました。さらに第三者(ウェブサイト運営者以外)のクッキー(サードパーティ・クッキー)をブラウザに読み込ませることを原則禁止することとなり、各国もこれに追随する動きを見せています。

ユーザーがどこから来たかとサイト内遷移がわかる

ユーザーがメールマガジンのリンクから来たのか、検索エンジンからきたのか、あるいは他のウェブサイトに貼られたリンクから来たのかといった情報や、サイト自体の中でどのように遷移しているのか、コンテンツ末尾の関連記事や項目のサジェスチョンをクリックして、サイト内を周回しているか、コンテンツ一覧を表示して、各コンテンツを逐次見ているのか、といったユーザーの行動を把握して分析することも可能です。

ウェブサイトの効果測定ができる

ウェブサイトの目的は様々ですが、たとえば特定の商品や映像コンテンツ、読み物コンテンツなどの、購入や利用につなげることを目的とした場合には、最終的にeコマースサイトへと誘導できたこと、当該コンテンツへのリンクのクリック、コンテンツが最後まで鑑賞、スクロールされた(読まれた)ことが、最終目的であり、これを「エンゲージメント(成約、関与を指す英語のひとつ)」(※)と呼びます。

エンゲージとは、決して商品やコンテンツの消費行動にかぎらず、資料請求やオンライン問い合わせ、無料会員登録やウェブマガジンの購読、各種資料PDFのダウンロード、SNSでの「いいね!」やRT、コメント投稿など、サイトの目的によって異なる、多種多様なユーザー行動を、指す言葉です。

エンゲージメントはウェブマーケティング全般で用いられる用語ですが、Googleアナリティクスの旧バージョン(かつ未だ現行バージョンでもある)UA(Universal Analytics)ではほぼ同義語と言っていいコンバージョン(遷移、すなわち成果)という用語が用いられていました。
コンバージョンのほうが、より消費行動を図る指標に近いと考えられており、今後もコンバージョン率も重要な指標の一つであることは間違いありません。

UA廃止と、GA4のスタートの理由

今回のGoogleアナリティクスのGA4へのバージョン・アップと、UAの廃止を決定した背景には、いくつもの要因がありますが、大きく3つに分けてご説明したいと思います。

プライバシー保護に係る法整備

国内でも話題になった改正個人情報保護法や、GDPR(EU一般データ保護規則)、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)といったプライバシー保護に係る法整備がその背景にあることは否めません。ブラウザへのトラッキング防止機能の実装や、前述のように、クッキー自体を個人情報とみなして、その利用を規制していく潮流があります。

多様化したウェブ利用スタイル

Googleアナリティクスのスタート時にはスマートフォンもまだ一人一台の時代ではなく、デジタルマーケティングは、PCからのウェブサイト閲覧と、メールマガジンの活用が中心でした。しかし今や、スマートフォンは日用品の一つとなり、無くてはならない生活のツールだといえます。これによりウェブサイトのデザインも変化し、モバイルアプリ経由のウェブアクセスも年々増加しています。

アクセス数の爆発的増加とそのビッグデータを解析するAI・機械学習の必要性

前述のように、子供から若者、中高年まで幅広いユーザーがアクセスする今、収集可能なデータは年々膨大になっています。これまでのように、アクセス数の集計と属性分析を人力で行って、解析するのはもはや困難だといえます。こうしたことを背景に、いま、急速に発展しているディープラーニングや機械学習と、それに支えられたAIの支援によるデータ処理・分析は、今後、必要不可欠となります。

UAからGA4への移行にあたっての注意点

UAとGA4ではデータの計測方法自体が根本的に異なるのでいくつかの注意点があります。

データ比較には注意が必要!

アクセス、ユーザーの遷移、コンバージョン(GA4では多様なエンゲージメント)率の全てにおいて、計測方法が変化するので、前年度比較などの対象としても、定量的な比較は難しくなります。これまで経年的にこれらの数値を使ってきたウェブサイトとしては、一旦リセットが掛かってしまいますが、これは世界的に起こっている事象なので、ある意味諦めるほかありません。

全面的なタグの貼り替えが必要である(※)

サイト構築にCMSのような柔軟かつ動的なマネジメント・システムを導入しておかないと、GA4以降のバージョンアップの可能性も含めて、膨大なページのHTMLタグの貼り替えが必要となってしまうリスクを抱えることとなります。直前になってから、ウェブサイトのシステム構築をやりなおすのでは間に合いませんので、これを機にウェブシステム全体の見直しを行うことが重要だと考えられます。

すでにGoogleTagManagerを導入済であれば、タグ張替え不要になりますので、システムの見直しを早急に行うことで、対応工数を最小限に留めることができます。

データ保持期限が無期限から14ヶ月へと短縮される

これまでは無償版のUAでも、データ保持期限は無期限とされてきたのですが、GA4では14ヶ月へと大幅に短縮されます。定期的にデータを自社のシステムに移動してバックアップしなければ、年度間の比較は不可能になってしまいます。実際のところ、Google自身、無償で無期限のデータを保存することが社内サーバーの限界に近づき、容量が飽和してしまう懸念が生まれたことも、今回のUA廃止とGA4への移行の遠因であろうと推察されています。

GA4移行のメリット

これまで話しの流れでは、UAからGA4に移行すると、収拾できるデータの質や量に制約がかかり、デメリットが多いように感じる方もいらっしゃると思いますが、実際にはバージョンアップすることで、個人情報保護にまつわる取り決めを遵守しながら、より有用で多様なデータ収拾と分析が可能になると考えられています。

ウェブアクセスとアプリからのアクセスを統合して計測可能

従来のUAではウェブとアプリにそれぞれ別のプロパティを紐づけて、別々に計測していましたが、GA4ではこれらを統合してGA4プロパティの中のウェブストリームとアプリストリームの形で、まとめて計測することが可能になりました。

AIによる異常検知や分析サポート

GA4にはAIによるアクセスの自動解析が「Insights」として通知されます。各ユーザーのアクセス数の急上昇や、国別アクセスの解析、前週比の実績といった分析結果が、手動ではなく確認することができます。

「オーディエンスの候補」を作成すれば「7日以内に購入する可能性が高い既存顧客」、「過去28日間に操作を行ったユーザーが今後28日間に達成する全購入コンバージョンによって得られる総収益の予測」などのデータを自動生成します。

「予測オーディエンス」の利用には前提条件があります。下記のヘルプページ参照
https://support.google.com/analytics/answer/9846734?hl=ja

機械学習による広告配信が簡単に

従来、データ収集を行ったあと、前処理とモデル構築、トレーニングなどの複数工程が必要でしたが、GA4では、データ収集してオーディエンスを作成するだけで、あとは自動的に広告配信へとつなげることが可能になりました。

より高精度なユーザー識別

GA4では各種規制を遵守したウェブサイトを構築しながら、従来のクッキーに頼ったユーザー識別よりも、ユーザーから了承を得た上で取得した3つの識別子を用いて、より高精度にユーザーを識別することができます。

①デバイスID
GA4ではデバイスIDを端末のブラウザ・アプリごとに、ファーストパーティ・クッキーを発行して個別の「クライアントID」および「アプリインスタンスID」として識別します。

②Googleシグナル
さらに、Googleアカウントにログインしているユーザーからは「Googleシグナル」というデータを取得して、Googleアカウントと紐づけて識別することもできます。

③ユーザーID
ウェブサイトやアプリが発行する、ユーザーを一意に識別できる固有ID(かいいんばんこうなど)です。ログイン制のウェブサイトであれば、このIDが最も精度の高い識別子であることは言うまでもありません。

まとめ

ご紹介したように、GA4は各種の個人情報保護の取り組みを遵守しながら、より高精度なアクセス解析を行い、AIによる支援を用いてウェブサイトの効果測定を行うことができる新たな仕組みです。これまでUAに慣れ親しんできたエンジニアや顧客にとって、あらためて、使い方、考え方、実装方法を勉強し直さなくてはならない点で、高いハードルですが、取り組む価値、必要性は、その労力を遥かに超えるといえるでしょう。

そして何より、2023年7月1日にUAによるデータ収集がストップする以上、取り組まなくてはならない喫緊の課題だともいえます。これまで多様なユーザー様のウェブサイト、ウェブシステムの構築をお手伝いしてきたイー・サポートは、今回のUAからGA4への移行はもちろんのこと、その解析データの活用に至るまで、柔軟にお手伝いをしていきたいと考えています。

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